「神の救いを待ち望む」
ダビデがその子アブサロムを避けてのがれたときの歌
3:1 主よ、わたしに敵する者のいかに多いことでしょう。わたしに逆らって立つ者が多く、
3:2 「彼には神の助けがない」と、わたしについて言う者が多いのです。〔セラ
3:3 しかし主よ、あなたはわたしを囲む盾、わが栄え、わたしの頭を、もたげてくださるかたです。
3:4 わたしが声をあげて主を呼ばわると、主は聖なる山からわたしに答えられる。〔セラ
3:5 わたしはふして眠り、また目をさます。主がわたしをささえられるからだ。
3:6 わたしを囲んで立ち構える/ちよろずの民をもわたしは恐れない。
3:7 主よ、お立ちください。わが神よ、わたしをお救いください。あなたはわたしのすべての敵のほおを打ち、悪しき者の歯を折られるのです。
3:8 救は主のものです。どうかあなたの祝福が/あなたの民の上にありますように。〔セラ
日本聖書協会『口語訳聖書』詩編 3篇1~8節
本題に入る前に、今日の詩篇を読み解く鍵となる聖書箇所を開いてみましょう。
ローマ5:1-5 このように、わたしたちは、信仰によって義とされたのだから、わたしたちの主イエス・キリストにより、神に対して平和を得ている。/わたしたちは、さらに彼により、いま立っているこの恵みに信仰によって導き入れられ、そして、神の栄光にあずかる希望をもって喜んでいる。/それだけではなく、患難をも喜んでいる。なぜなら、患難は忍耐を生み出し、/忍耐は錬達を生み出し、錬達は希望を生み出すことを、知っているからである。/そして、希望は失望に終ることはない。なぜなら、わたしたちに賜わっている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである。
「患難は忍耐を生み出し、忍耐は錬達を生み出し、錬達は希望を生み出す」とあります。この忍耐は、ただじっと耐え忍ぶと言うよりは、神は必ず救いの約束を成就してくださると信じて待ち望む忍耐です。そうして、そこに神が働き勝利させて下さることを繰り返し体験することで、私たちは錬達の人へと成長し、どんなときにも希望に生きられるようになります。
今日は、「患難は忍耐を生み出し、忍耐は錬達を生み出し、錬達は希望を生み出し、そして希望は失望に終ることはない」ことを、詩篇三篇に教え導かれましょう。
1.敵する人々がなんと多いことか
主なる神様によって油注がれた王ダビデの生涯には、幾多の困難、苦しみ、悩み、悲しみがありました。彼の頭(こうべ)は、王であったにもかかわらず何度も深くうなだれました。
ダビデがその子アブサロムを避けてのがれたときの歌
3:1-2 主よ、わたしに敵する者のいかに多いことでしょう。わたしに逆らって立つ者が多く、/「彼には神の助けがない」と、わたしについて言う者が多いのです。
この時のことは、サムエル記下15章以下に詳しく記されています。
ダビデ王の三男アブサロムは父ダビデに謀反をたくらみ、四年がかりで人心を自分になびかせ、ダビデの有力な部下まで味方につけ旗上げしエルサレムを攻めました。子が父を殺そうとしたのです。ダビデは少数の民を連れて、キデロン川をはだしで渡って逃げます。オリーブ山の斜面を上る時、ダビデは顔を覆って泣きました。同行した人々もみな泣きました。山の向こう側に着くと、先代の王サウル一族のシムイが、ダビデに石や塵を投げつけ、口汚くののしりました。ダビデの人生で、これほど絶望的なことはなかったのです。
今の時代は、この様な謀反は稀ですが、人を絶望と死に追いやる点で本質的に同じ行為、DV、いじめ、ハラスメント、誹謗中傷等は日常茶飯事です。今の時代は表面的に平和でも、多くの人々の心が病む悪しき時代です。神は声高に呼ばわっておられます、「わたしの救いを求めなさい、待ち望みなさい」と。
2.わたしが、いつどこにいようとも
絶望のどん底からダビデは祈りました。
3:3-4 しかし主よ、あなたはわたしを囲む盾、わが栄え、わたしの頭を、もたげてくださるかたです。/わたしが声をあげて主を呼ばわると、主は聖なる山からわたしに答えられる。
この祈りには目を見張るものがあります。そのことを知るために、ダビデが神の都エルサレムを脱出する際のことが記されている聖書箇所を開きましょう。
サムエル記下15:24-25 そしてアビヤタルも上ってきた。見よ、ザドクおよび彼と共にいるすべてのレビびともまた、神の契約の箱をかいてきた。彼らは神の箱をおろして、民がことごとく町を出てしまうのを待った。/そこで王はザドクに言った、「神の箱を町にかきもどすがよい。もしわたしが主の前に恵みを得るならば、主はわたしを連れ帰って、わたしにその箱とそのすまいとを見させてくださるであろう。
ここから明らかになることは、「契約の箱を携えることが救いをもたらすのではない」、いわゆる“お守り”を持たずとも、わたしがいつどこにいようとも主は御自身がおられるその所からわたしに答えてくださる、との信仰です。
3.主が支えて下さるからわたしは安んじる
さらにダビデはこう言っています。
3:5 わたしはふして眠り、また目をさます。主がわたしをささえられるからだ。
3:6 わたしを囲んで立ち構える/ちよろずの民をもわたしは恐れない。
また、主イエスも危機的状況にあっても安らかに眠っておられました。
マタイ8:24 すると突然、海上に激しい暴風が起って、舟は波にのまれそうになった。ところが、イエスは眠っておられた。
イエスだから特別なんだと思ってはなりません。イエスについてこう書かれています。
ヘブル5:7 キリストは、その肉の生活の時には、激しい叫びと涙とをもって、ご自分を死から救う力のあるかたに、祈と願いとをささげ、そして、その深い信仰のゆえに聞きいれられたのである。
要は堅忍不抜の信仰です。信仰に留まり続けることで、普通なら滅入ってしまう状況を克服できます。「忍耐は錬達を生み出し、錬達は希望を生み出す」ように神が助けて下さいます。
4.神の御業は繰り返される
私たちの信仰の根拠は、神の不変性にあります。かつて神が為されたことは、時宜が叶えばまた繰り返えされるのです。ですからダビデは過去の出来事を回顧しつつ御手の業を祈り求めています。
3:7 主よ、お立ちください。わが神よ、わたしをお救いください。あなたはわたしのすべての敵のほおを打ち、悪しき者の歯を折られるのです。
「お立ちください」とは、モーセに率いられてエジプトから約束の地に向かって進みゆくイスラエルの民が、いよいよ敵対する異民族支配地域を通過する旅立ちの時の祈りの言葉です。
(1)出エジプト
民数記10:35 契約の箱の進むときモーセは言った、「主よ、立ちあがってください。あなたの敵は打ち散らされ、あなたを憎む者どもは、あなたの前から逃げ去りますように」。
モーセの祈り、またダビデの祈りは、現代の私たちの祈りでもあります。なぜなら罪と誘惑が支配するこの中を御国に向かって進んでいる点で同じだからです。
神の敵に対しては神御自身の出動を求めてじっと待つのが最善の策です。私的な反撃や憎しみ、権謀術数を巡らすことなく正しいさばきをなさる神にゆだねることが詩篇の大きな教訓です。
(2)自身のゴリアテとの戦い
神にゆだねることは、ゴリアテとの戦いに於けるダビデ自身の体験にも基づきます。
サムエル記上17:37 ダビデはまた言った、「ししのつめ、くまのつめからわたしを救い出された主は、またわたしを、このペリシテびとの手から救い出されるでしょう」。サウルはダビデに言った、「行きなさい。どうぞ主があなたと共におられるように」。
この時、神の敵は神によって野の獣のように扱われ、ダビデは牧者に守られる羊のようでした。
そしてダビデは真の王に相応しく祈っています。
3:8 救は主のものです。どうかあなたの祝福があなたの民の上にありますように。
実子の反乱、王として父親としての失敗とも言える謀反は、当然国全体に動揺をきたし、諸外国に隙を見せることになりましたから、ダビデは反省をこめて国民全体のための視福を祈りました。
5.むすびの奨励
ともすると私たちは試煉にあうと信仰が動揺し、教会から遠ざかることも起きてきます。しかし、聖書は私たちを励まします。万事窮して弱り果てうなだれても、周りの人々から「彼には助けがない」と見捨てられても、あなたは「神の救いを待ち望む」のだ! あなたが神に祈り求めるなら、わたしはあなたの頭(こうべ)をもたげる、と。
「神がわたしたちの味方である」なら、試みや“敵”は必ずしも忌避すべきものとは言い切れません。その様な困窮が、しばしば神を求めるチャンスとなるからです。こうした体験の積み重ねによって信仰が生まれ、成長させられ、救いへと導き入れられるのです。
ローマ8:30-32 そして、あらかじめ定めた者たちを更に召し、召した者たちを更に義とし、義とした者たちには、更に栄光を与えて下さったのである。/それでは、これらの事について、なんと言おうか。もし、神がわたしたちの味方であるなら、だれがわたしたちに敵し得ようか。/ご自身の御子をさえ惜しまないで、わたしたちすべての者のために死に渡されたかたが、どうして、御子のみならず万物をも賜わらないことがあろうか。
私たちもキリスト・イエスへの信仰に立ち、神の全き救いを待ち望む日々を共に送りましょう。
■この日の信仰告白
ウェストミンスター小教理問答 問99、106、107
■この日の讃美歌
22番「めさめよ、わがたま あさ日にともない」
270番「信仰こそ旅路を みちびく杖」
494番「わが行く道 いついかに」
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