「なぜ国々は騒ぎ立ち」
2:1 なにゆえ、もろもろの国びとは騒ぎたち、もろもろの民はむなしい事をたくらむのか。
2:2 地のもろもろの王は立ち構え、もろもろのつかさはともに、はかり、主とその油そそがれた者とに逆らって言う、
2:3 「われらは彼らのかせをこわし、彼らのきずなを解き捨てるであろう」と。
2:4 天に座する者は笑い、主は彼らをあざけられるであろう。
2:5 そして主は憤りをもって彼らに語り、激しい怒りをもって彼らを恐れ惑わせて言われる、
2:6 「わたしはわが王を聖なる山シオンに立てた」と。
2:7 わたしは主の詔をのべよう。主はわたしに言われた、「おまえはわたしの子だ。きょう、わたしはおまえを生んだ。
2:8 わたしに求めよ、わたしはもろもろの国を/嗣業としておまえに与え、地のはてまでもおまえの所有として与える。
2:9 おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り、陶工の作る器物のように彼らを/打ち砕くであろう」と。
日本聖書協会『口語訳聖書』詩編 2篇1~9節
この世には、あきれるほど多種多様の“敵”が存在します。覇権を争いあう国家・民族といった敵、人間関係における“敵”、生活上の困難、試練、誘惑等々。
しかし、そのような“敵”がいかに騒ぎ立てようとも、私たちは神が立てて下さった王イエス・キリストに依り頼めばよいのです。
1.詩篇第二篇の要約
(1)歴史的背景
二節には「油そそがれた者」とあります。その人は、
列王記上1:45 祭司ザドクと預言者ナタンはギホンで彼に油を注いで王としました。…
と書かれているソロモン王のこととも解釈されます。しかし私たちが心をとめるべきは、それが誰なのかより、「油そそがれ」ることと私たちとの関わりです。
(2)王に逆らう人々と、彼らに対する神の怒り 1-3節
「油そそがれた者」とは、狭い意味では国家・民族の王のことで、広い意味では神の召しを受けた人々のことです。まず、狭い意味での王についてですが、
1) 王は権力闘争の勝利者ではなく、万物の創造者であり支配者である神に選ばれ召された存在です。
2) 従って、王は神の代理人として地上を治めるべき召され、特権と同時に重い責任を与えられています。しかし“敵”は、そのことが判らず挑みかかります。詩篇第二編は、その様な愚行に対する神の驚きと怒りから始まっています。
2:1-3 なにゆえ、もろもろの国びとは騒ぎたち、もろもろの民はむなしい事をたくらむのか。/地のもろもろの王は立ち構え、もろもろのつかさはともに、はかり、主とその油そそがれた者とに逆らって言う、/ 「われらは彼らのかせをこわし、彼らのきずなを解き捨てるであろう」と。
(3)「天に座する」神のことば 4-6節
2:4-6 天に座する者は笑い、主は彼らをあざけられるであろう。/そして主は憤りをもって彼らに語り、激しい怒りをもって彼らを恐れ惑わせて言われる、/ 「わたしはわが王を聖なる山シオンに立てた」と。
ここでは、「私が聖別した場所シオン、すなわちエルサレムで、私が彼を即位させたことを弁えなさい」、「あなたたちがすることは、天に向かってつばを吐くことだ」と言わんばかりです。
(4)神の召しを受けた王の信仰告白 7-9節
続いて、神の召しを受けた王の信仰告白です。王に与えられた神の言葉が引用されてます。
2:7 わたしは主の詔(みことのり)をのべよう。主はわたしに言われた、「おまえはわたしの子だ。きょう、わたしはおまえを生んだ。
「わたしはおまえを生んだ」とは、神が王を神との新しい関係に入れた、ということです。そして、
2:8 わたしに求めよ、わたしはもろもろの国を嗣業としておまえに与え、地のはてまでもおまえの所有として与える。
この8節は、神に求めることこそ国家繁栄の鍵であり王の務めだと教えています。興味深いことに、8節は、列王記上3章5-14節に記されたソロモンの夢の中での神との対話をぎゅっと“濃縮”したものです。(是非一読を)。しかも8節は、かつて預言者ナタンを通してダビデに与えられた神の約束、“ダビデ契約”の確認です。その契約とは、
サムエル記下 7:15-16 しかしわたしはわたしのいつくしみを、わたしがあなたの前から除いたサウルから取り去ったように、彼からは取り去らない。/あなたの家と王国はわたしの前に長く保つであろう。あなたの位は長く堅うせられる』」。
この様に、詩篇第二篇は、神が人間と結んで下さった契約(救いの契約)に基づいていることが判ります。
(5)神と神が立てた王への服従こそさいわい 10-12節
全世界の王であり主である神から任命を受けた王、その王に従う人々はさいわいだと、詩篇2篇は締め括られます。
2.イエスこそ我らの王 イエスに於ける旧約の成就 新約 イエスの時と 終わりの日
(1)先ほどの1-3節には、神が立てた王に逆らう人々に向けられた神の驚きと怒りが記されていましたが、使徒4:24-29には具体例が書かれています。
使徒4:24-29 一同はこれを聞くと、口をそろえて、神にむかい声をあげて言った、「天と地と海と、その中のすべてのものとの造りぬしなる主よ。/あなたは、わたしたちの先祖、あなたの僕ダビデの口をとおして、聖霊によって、こう仰せになりました、『なぜ、異邦人らは、騒ぎ立ち、/もろもろの民は、むなしいことを図り、/地上の王たちは、立ちかまえ、支配者たちは、党を組んで、主とそのキリストとに逆らったのか』。/まことに、ヘロデとポンテオ・ピラトとは、異邦人らやイスラエルの民と一緒になって、この都に集まり、あなたから油を注がれた聖なる僕イエスに逆らい、/み手とみ旨とによって、あらかじめ定められていたことを、なし遂げたのです。/主よ、いま、彼らの脅迫に目をとめ、僕たちに、思い切って大胆に御言葉を語らせて下さい。
神が立てた全人類の王はイエス・キリストののです。「詩篇はイエス・キリストを指し示している」のです。
(2)先ほどの7節にはこうありました。
2:7 わたしは主の詔をのべよう。主はわたしに言われた、「おまえはわたしの子だ。きょう、わたしはおまえを生んだ。
主イエスがヨルダン川で洗礼を受け、水から上がられた時は
マルコ1:11 すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
と天から声がありました。また、十字架を間近に控えて、イエスがペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて高い山に登られた時のイエス変貌の出来事でも、
ルカ 9:35 すると雲の中から声があった、「これはわたしの子、わたしの選んだ者である。これに聞け」。
と父なる神は言われました。また、イエス御自身、神から油注がれた王であることを明言されました。
ヨハネ18:37 そこでピラトはイエスに言った、「それでは、あなたは王なのだな」。イエスは答えられた、「あなたの言うとおり、わたしは王である。わたしは真理についてあかしをするために生れ、また、そのためにこの世にきたのである。だれでも真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」
(3)7節後半、「きょう、わたしはおまえを生んだ」
使徒13:32-33 わたしたちは、神が先祖たちに対してなされた約束を、ここに宣べ伝えているのである。/神は、イエスをよみがえらせて、わたしたち子孫にこの約束を、お果しになった。それは詩篇の第二篇にも、『あなたこそは、わたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ』と書いてあるとおりである。ローマ1:4 聖なる霊によれば、死人からの復活により、御力をもって神の御子と定められた。これがわたしたちの主イエス・キリストである。
わたちの救い主、私たちを治める「王」として油を注がれたお方です。それゆえ、
(4)9節、イエスは全天下の国々の王
2:9 おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り、陶工の作る器物のように彼らを/打ち砕くであろう」と。
イエスが「鉄の杖」、すなわち強くて抵抗不可能な杖、正義の杖を用いて、羊飼いが羊を牧するごとく全天下を治めることが預言されてます。そのことは、
ダニエル7:27 国と主権と全天下の国々の権威とは、いと高き者の聖徒たる民に与えられる。彼らの国は永遠の国であって、諸国の者はみな彼らに仕え、かつ従う』。
と、永遠の御支配が預言され、
黙示録12:5 女は男の子を産んだが、彼は鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者である。この子は、神のみもとに、その御座のところに、引き上げられた。
とあるように聖書の至る所で、死に打ち勝って復活・昇天されたイエス・キリストこそ全天下の王であることが明らかにされています。
3.私たちへの祝福とこの世への戒め
今日お話ししたことを纏めれば、
(1)神が油を注いで召して下さった者に反対する人々は驚くほど多くいて、嘲り逆らう。
(2)しかし、神は救いの御業を終わりの日に至るまで御心のままに進められる。
(3)イエスこそ救いの御業を成し遂げる為に油注がれた私たちの王である
(4)私たちにとって、イエス・キリストに従うことがさいわいなのだしかも御言葉の確かさを、主イエス御自身が身をもって現して下さりました。
ピリピ2:8-9 おのれを低くして、死に至るまで、しかも十字架の死に至るまで従順であられた。/それゆえに、神は彼を高く引き上げ、すべての名にまさる名を彼に賜わった。
私たちは、神が立てて下さった王、イエス・キリストをどう受け止めているか、それが問われています。
■この日の信仰告白ウェストミンスター小教理問答 問21、23、26■この日の讃美歌 12番「めぐみゆたけき主を」 76番「ほめまつれ御神をば」 525番「めぐみふかき 主のほか」
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