岡本先生と共に味わう讃美の力 (15) 讃美歌502番「いともかしこし」(I Love to Tell the Story ) ~シンシナティ日本語教会主催
さあ、神様を敬う人よ、こっちへ来て聞きなさい。 神様のなさったことをいろいろとお話ししますから。【リビングバイブル】 日本聖書協会『口語訳聖書』詩編 66編16節
■ はじめに
今回取り上げる讃美歌502番「いともかしこし」(I Love to Tell the Story)です。
今日は、私の拙い和訳(資料1)を順に辿りながら、準備期間中に私が黙想した聖句を紹介してまいります。
ご参加下さった皆さまにおかれては、聞きながら思い巡らして頂きたい事があります。それは、
(1) 作詞者キャサリン・ハンキーは、闘病生活中にどんな御言葉を黙想しながら詩を書いたのだろう?
(2) パール・バックは、彼女の母親が弟に歌い聞かせたこの讃美歌をどの様な思いで聞ていたのだろう?
(3) (そしておそらく、)障害を持った娘に、どんな思いでこの讃美歌を歌い聞かせたのだろうか。
(4)パール・バック自身、どんな御言葉を聞いて慰め励まされ、絶望のどん底から立ち上がったのだろう?
この様な問いかけを思い巡らしながら、この讃美歌が有する力をご一緒に味わってまいりたいと願っています。
では、まず「繰り返し」から始め、続いて1節へと進んでまいります。
■ ♪ ~ 繰り返し ~ ♪
I love to tell the story,
'Twill be my theme in glory,
To tell the old, old story
Of Jesus and His love.
私はその物語を語るのが大好きです、
それは私の栄えあるテーマになるでしょう、
古い、古い物語を語ること
イエスと彼の愛についてです。」
~ ♪ 繰り返しend ♪ ~
the story、 the old, old story を私は物語と訳しましたが、「聖書に記された出来事・歴史、昔の聖徒たちの喜びの証言集」とも言えるのではないでしょうか。私たちの神様はとこしえに変わらないお方です。ひとたび聖書(過去の出来事)を通して現わされた御心は、未来も変わること無く成し遂げると神ご自身が訳そうされています。その様な聖句を作詞者は思い巡らし、信じて待ち望んでいます。ですから、the story、 the old, old storyを話すことが I love 、大好き、そして「いわば生きがい」になっているのですね。
■ ♪ ~ 一節 ~ ♪
I love to tell the story
Of unseen things above,
Of Jesus and His glory,
Of Jesus and His love.
I love to tell the story,
Because I know 'tis true;
It satisfies my longings
As nothing else can do.
私はその物語を語るのが大好きです
天上の目に見えないもの、
イエスと彼の栄光、
そして、イエスと彼の愛についてです。
私はその物語を語るのが大好きです、
なぜなら、それは真実だと知っているからです。
それは私の願い(my longings)を満たします
他の何ものもできないほどに。
~ ♪ 一節end ♪ ~
my longingsの意味は「私の願い、思い慕うこと、恋しく思うこと」ですが、聖書(NIV)では、次の様に使われています。なお、丸付き数字は、資料2の引照聖句の番号です。
① 詩篇38:9
詩 38:9 主よ私の願いはすべてあなたの御前にあり私の嘆きはあなたに隠れてはいません。
Psa 38:9 All my longings lie open before you, O Lord; / my sighing is not hidden from you.
■ ♪ ~ 二節前半 ~ ♪
I love to tell the story;
More wonderful it seems
Than all the golden fancies
Of all our (*) golden dreams.
* ourがmyになっている歌詞もあります
私はその物語を語るのが大好きです。
あらゆる金色の夢の
黄金色の幻想よりも
ずうっと素晴らしいのです。
~ ♪ 二節end ♪ ~
その物語を語ることは「...よりも、ずうっと素晴らしい」と歌っていますが、どんな素晴らしさでしょう。
リビングバイブルを開いて詩篇66編を見てみましょう。
③ 詩篇66:5-6
詩 66:5 さあ、こっちへ来て、神様がどんなにすばらしいことをなさったかご覧なさい。 神様の国民は驚くべき奇蹟を体験するのです。
詩 66:6 例えば、海の中にかわいた道をつくっていただいたこともありました。 人々はそこを踏みしめて渡りました。 その日、彼らはどれほど興奮し、喜びにあふれたことか!
この詩66:6編を新改訳2017は「神は海を乾いた所とされた。人々は川の中を歩いて渡った。さあ私たちは神にあって喜ぼう。」と訳していますが、「さあ私たちは神にあって喜ぼう」こそ、詩篇66編の中心的メッセージです。5節の「さあ、ご覧なさい」は、直接的には6節の、神が紅海の水を分けて下さり、その中を神の民は前進しパロは敗退した輝かしい救いの御業を、「さあ、ご覧なさい」です。
作詞者は、この紅海渡渉以外にも歴史に現された主の御業の数々を回想したことでしょう。
ところで、新改訳2017では5節を「さあ神のみわざを見よ。神が人の子らになさることは恐ろしい」と訳しています。誤解を招かない様に補足説明を加えますと、新改訳2017で「恐ろしい」と訳されたヘブライ語の原意は、「恐ろしくなる、驚嘆させる」です。従って5節は「神の子らを守り、敵を打ち倒すために神は恐るべき御業をなされ、敵を恐怖で震え上がらせる」ことを言っています。ですので、今日の讃美歌を味わううえではリビングバイブルの意訳は適切かと思います。
先ほども申し上げた様に、過去の出来事を通して神は信じる者を救うとの御心を現して下さっています。その神はとこしえに変わらないお方です。ですので、過去の歴史において神が為された驚くべき救いのわざは、今後未来に於ける神の御支配の永遠性と救いの不変性の証拠です。
旧約の時代において神が為された救いの出来事で最大のものは出エジプトと言えます。とこしえに変わらない神が、新約の時代に現してくださった出来事は、もちろんイエス・キリストです。その、今も生きて働いておられる主イエスがこれからの未来に為してくださる事を「さあ、ご覧なさい」と語り伝えることも、「I love to tell the story」なのです。
そして、「さあ、私たちは、神にあって喜ぼう。」私たちも、昔の神の民たちと同じ救いの喜びに与ろうと招かれています。いにしえの場面は眼前にはっきり見え、あたかもその場に居合せているかのようです。終わりの日には主が輝かしい最終的勝利を収められるので、私たちは主を讃美します。
■ ♪ ~ 二節後半 ~ ♪
I love to tell the story,
It did so much for me;
And that is just the reason
I tell it now to thee.
私はその物語を語るのが大好きです、
その事は私に多くを為してくれました
それこそが、まさにその理由です
私が今あなたにお伝えすることの。
~ ♪ 一節end ♪ ~
その物語は「私に多くを為してくれました」とありますが、作詞者と同じ詩篇記者の思いが詩篇66:16に記されています。先ほどのリビングバイブルを開きます。
② 詩篇66:16
詩 66:16 さあ、神様を敬う人よ、こっちへ来て聞きなさい。 神様のなさったことをいろいろとお話ししますから。
16節の「敬う」は5節の「恐れる」と同じヘブライ語です。
新改訳2017は「さあ聞けすべて神を恐れる者たちよ。神が私のたましいになさったことを語ろう。」と訳しています。
神の恵みは、まず目や耳といった“門”を通って私たちのもとに来ます。
「神が私のたましいになさったことを語ろう」、神が私の魂、私の最良の部分になしてくださったことを、救いを体験した者は、証しせずにはいられないのです。それによって、かつては私たち自身がそうであった様に、求道者や霊的に弱っている方々が勇気づけられ、神信頼へと導かれていきます。
■ ♪ ~ 三節 ~ ♪
I love to tell the story;
'Tis pleasant to repeat
What seems, each time I tell it,
More wonderfully sweet.
I love to tell the story,
For some have never heard
The message of salvation
From God's own holy Word.
私はその物語を語るのが大好きです。
繰り返すのは楽しいことです
私がそれを語るたびに感じることは、
よりすばらしい芳しさです。(More wonderfully sweet)
私はその物語を語るのが大好きです、
これまで一度も聞いたことがない人々に
救いのメッセージを
神自身の聖なる言葉を。
~ ♪ 三節end ♪ ~
よりすばらしい「芳しさ」 ( sweet)を聖書はこう表現しています。
④ エペソ5:2
エペソ5:2 また、愛のうちに歩みなさい。キリストも私たちを愛して、私たちのために、ご自分を神へのささげ物、またいけにえとし、芳ばしい香り(sweetsmelling savour)を献げてくださいました。
⑤ マルコ16:1
マル 16:1 さて、安息日が終わったので、マグダラのマリアとヤコブの母マリアとサロメは、イエスに油を塗りに行こうと思い、香料(sweet spices)を買った。
ところで、神の福音そのものは蜜のように甘いのですが、聞こうとしない人々から反発や無視をされるところに苦さがあることは、私たちも幾度となく経験してますね。聖書もこう記しています。
⑥ 黙示録10:9-10
黙 10:9-10 私はその御使いのところに行き、「私にその小さな巻物を下さい」と言った。すると彼は言った。「それを取って食べてしまいなさい。それはあなたの腹には苦いが、あなたの口には蜜のように甘い (sweet) 。」/そこで、私はその小さな巻物を御使いの手から受け取って食べた。口には蜜のように甘かった (sweet)が、それを食べてしまうと、私の腹は苦くなった。
しかし、その苦さを知っているからこそ、御言葉の芳しさ、蜜のような甘さが際立つとも言えます。
■ ♪ ~ 四節前半 ~ ♪
I love to tell the story,
For those who know it best
Seem hungering and thirsting
To hear it like the rest.
私はその話をするのが大好きです、
その物語を最も良く知る者が語ります
飢え渇いている人々のために
彼らはその物語を聞いて休むのです。
~ ♪ 四節前半end ♪ ~
主イエスの言葉かハッキリ聞こえてきますね!
⑦ マタイ5:6
マタイ5:6 義に飢え渇く者は幸いです。その人たちは満ち足りるからです。
⑨ マタイ11:28-30
マタイ11:28-30 すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませて(rest)あげます。/わたしは心が柔和でへりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすれば、たましいに安らぎ(rest)を得ます。/わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。」
■ ♪ ~ 四節後半 ~ ♪
And when, in scenes of glory,
I sing the new, new song,
'Twill be the old, old story
That I have loved so long.
そして、栄光のシーンでは、
私は新しい、新しい歌を歌います、
それは、私が長い間愛してきた
古い、古い物語なのです。
~ ♪ 四節後半end ♪ ~
ここで歌われる「栄光のシーン」とはどんな情景でしょう! また「新しい、新しい歌」はなぜ「私が長い間愛してきた古い、古い物語」なのでしょう。
ここは、私が下手な解説をせず、この後の分かち合いの時間に皆さまの思いを話し合っていただければと思います。
それでは、ひと言祈り、分かち合いの時へと進んで参りましょう。
■ 後日談
四節前半の私訳を、Y.Sさんが寄せて下さりました。
♪ ~ 四節前半《私訳》 ~ ♪
I love to tell the story,
For those who know it best
Seem hungering and thirsting
To hear it like the rest.
私はその話をするのが大好きです。
なぜなら、異邦人(神の言葉を初めて聞く人)のように、
その物語を最もよく知る者でさえも、
神の言葉に飢え渇いているからです。
~ ♪ 四節前半《私訳》end ♪ ~
この訳詩を読んで、 福音を語る事に一生懸命な牧会者が見落としがちな「自分自身の霊的葛藤」が洞察されていることに気付かされ、ハッとして目から鱗が落ちた思いでした。
とても感謝です。