クリスマスイブ 夕拝 「何が見えていますか」 ~♪ きよしこの夜 (シンシナティ日本語教会)

クリスマスイブ 夕拝 「何が見えていますか」 ~♪ きよしこの夜 (シンシナティ日本語教会)

2:8 さて、その地方で、羊飼いたちが野宿をしながら、羊の群れの夜番をしていた。
2:9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。
2:10 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。見なさい。私は、この民全体に与えられる、大きな喜びを告げ知らせます。
2:11 今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。
2:12 あなたがたは、布にくるまって飼葉桶に寝ているみどりごを見つけます。それが、あなたがたのためのしるしです。」
2:13 すると突然、その御使いと一緒におびただしい数の天の軍勢が現れて、神を賛美した。
2:14 「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和がみこころにかなう人々にあるように。」
2:15 御使いたちが彼らから離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは話し合った。「さあ、ベツレヘムまで行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見届けて来よう。」
2:16 そして急いで行って、マリアとヨセフと、飼葉桶に寝ているみどりごを捜し当てた。
2:17 それを目にして羊飼いたちは、この幼子について自分たちに告げられたことを知らせた。
2:18 聞いた人たちはみな、羊飼いたちが話したことに驚いた。
2:19 しかしマリアは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。
2:20 羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて御使いの話のとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。
日本聖書協会『口語訳聖書』ルカによる福音書 2章8節~20節


■ はじめに
「メリークリスマス!」
アメリカ・カナダ、日本にも大寒波が襲来しているさなか、ネットワークが守られオンラインで私たちは暖かく安全にクリスマスイブの夕礼拝に集える恵みを、主に感謝します。


■1.「何が見えていますか?」
今夕の聖書箇所は、この後に讃美する「きよしこの夜」の引照聖句にもなっています。
説教題「何が見えていますか?」に、「皆さま、今、見えているものをどう理解しておられますか?」との思いを込めてメッセージさせていただきます。


■2.羊飼たちが見たこと聞いたこと
羊飼いたちが羊の群れの夜番をしていた最中、主の使いが彼らのところに突然来た時から、マリアとヨセフと飼葉桶に寝ている主イエスを捜し当てる迄の間に、羊飼たちは何を見たのか体験したのかについて、ご一緒に確認してみましょう。

①羊飼いたちの周りを照らした主の栄光を見た
2:9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。

②大きな喜びの告知を聞いた
2:10-11 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。見なさい。私は、この民全体に与えられる、大きな喜びを告げ知らせます。/今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。

③「飼葉桶に寝ているみどりごを見つけます」とのしるしを与えられた
2:12 あなたがたは、布にくるまって飼葉桶に寝ているみどりごを見つけます。それが、あなたがたのためのしるしです。」
〈見つけます〉は、①見つける、特に努力して探した末に見出すこと、②見抜く、看破することです。KJV(King James Version、1611年刊行英訳聖書)はこの箇所を〈Ye shall find〉と訳していますが素晴らしい訳だと思います。ルカ19:30も同様です

④御使いとおびただしい数の天の軍勢による神賛美とその光景を見た。
2:13 すると突然、その御使いと一緒におびただしい数の天の軍勢が現れて、神を賛美した。

⑤神からのメッセージを聞いた。
2:14 「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和がみこころにかなう人々にあるように。」

⑥飼葉桶に寝かされている救い主を見た
2:16 そして急いで行って、マリアとヨセフと、飼葉桶に寝ているみどりごを捜し当てた。

この様に、羊飼たちは少なくとも六つの事を見聞した訳です。


■3.羊飼いたちが知らせたこと
そして17節以下には、飼葉桶に寝ているみどりごを見た羊飼いたちが取った行動が記されています。

2:17 それを目にして羊飼いたちは、この幼子について自分たちに告げられたことを知らせた。

もう一度17節を、羊飼いたちは何を知らせたのか見てみましょう。

2:17 …この幼子について自分たちに告げられたこと…

です。
羊飼たちは少なくとも六つの事を見聞きしたのですが、聖書は[幼子について自分たちに告げられたこと]だけを記してます。
実際には、羊飼いたちは他の事も話したでしょう。恐ろしい程の光景だったこと、にわかには信じ難かったこと等も話したでしょう。しかし聖書は[幼子について自分たちに告げられたこと]だけを記しています。

「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。」(11)
「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和がみこころにかなう人々にあるように。」(14)

神が〈告げられたこと〉を知らせるだけで十分、羊飼いたちが見聞きした他の事は付け足しの様なものだ、と聖書は言わんばかりです。


■4.「きよしこの夜」誕生物語
次に、今日の聖書箇所を引照聖句とする讃美歌「きよしこの夜」に話を移します。
この讃美歌はおそらく世界中で一番有名なクリスマスの歌で、曲そのもの以外にも曲が作られた経緯や作詞作曲者についても良く知られています。しかし、作曲者グルーバー自身が書き残した記録には無い事の方が世界中に広まっているようです。
私が参考にした三つの資料でも微妙な相違点があります。ネット上は言わずもがなです。今、確かな事としてお話出来るのは、
①1818年のクリスマスイブ、教会のオルガンが故障していたことと、代りの楽器としてギターが使われたことは事実ですが、故障の原因はネズミがふいごをかじったからというのは怪しい。
②モーアから「伴奏をぜひギターで」との依頼を受けて、急遽グルーバーが作曲した。
これらのことくらいです。


■5.「きよしこの夜」の歌詞
資料1の左半分に讃美歌109番の歌詞を、右側に原歌詞の和訳(大塚仁子さんの訳詞)を掲載しました。

(1) 原歌詞(ドイツ語)
原歌詞の1-2節は、「聖書のメッセージが無い」、「主イエスが巻き毛? ちぢれ毛?」、「(当時の)ロマン派詩人の影響を受けている」と言った批判もあるようです(大塚)。
しかし、この「きよしこの夜」の歌詞はカトリックの助任司祭モーアが書いたにも関わらず、聖母マリア崇拝が無い(大塚)のでプロテスタント教会にも受け入れられています。これ以外にも特筆すべきことがあります。

①ルカ2章に記された出来事の意味と、背景にある「救いの歴史」の進展を見抜き、神主体(主人公)で讃美していること。
・3節4行目「全能の神はあふれるほどの慈悲を示された」
・4節2行目「今日、全能の神は」
・5節4行目「遠い昔、我らの父祖の時代から神は」...この出来事は、私たちが久しく待ち望んだ「救い主」が、旧約聖書の時代に啓示された通りに来られた!

②6節最後の二行、「Jesus der Retter ist da!」のdaと歌うことで、「イエスは現にここにおられる」との臨場感が漲っていること(大野)。

※↑『原典版「聖しこの夜」/グルーバー作品集』(CD 30CT-77)添付解説書 表表紙

(2) 讃美歌109番歌詞
原曲との違いは一目瞭然です。讃美歌109番では神が主語になっている歌詞が全部省かれています。
1818年のクリスマスイブ、ザルツブルク近郊にあるオーベルンドルフの教会で初演された後、いつの間にか一番大切なメッセージが省かれたのです。

ここで聖書に戻り、そこに登場する羊飼いたちは何を知らせたかを思い出して下さい。

2:17 それを目にして羊飼いたちは、この幼子について自分たちに告げられたことを知らせた。

(部分削除された)「きよしこの夜」は、信仰の有無を問わず多くの人々に抵抗なく親しまれ歌われます。教会の中よりも外で歌われ演奏される事の方が多いかもしれません。そして歌っていると、ホノボノとした聖らかな気分になります。しかし、[幼子について人類に告げられたこと]は歌わない。

これは讃美歌109番だけではありません。讃美歌21でも同様です。また、
①ルター派教会のドイツ語讃美歌集(EKG、1989年出版)でも3-5節は省いてます。
②英語讃美歌集も、ほとんど3-5節を省いているようです。
③一番普及している英語讃美歌集では、1節3行目、原歌詞では「Nur das traute heilige Paar(信頼し合う聖なる二人だけ、つまりヨセフとマリア」とあるところが「Round yon virgin mother and Child」となっています。


■6.結びの奨励
最後にもう一つ、皆さまにお話ししたい事があります。
「きよしこの夜」の曲と共に語り継がれ知られるべき事は、「ネズミにふいごをかじられたオルガン」の類いの伝説では無く、「きよしこの夜」が誕生した歴史的背景ではないだろうか、と言う事です。

この讃美歌が初演された1818年、ナポレオン戦争(1799~1815)の戦場になったオーベルンドルフは、戦後処理で町はオーストリアとドイツに二分され、衰退した町は飢饉、大火と洪水に見舞われ、貧困にも喘いでいたのです。受けた苦しみを補ってくれる唯一の望みは、あの世での約束だったのです。

  「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和がみこころにかなう人々にあるように。」(2:14)

この御言葉は、救い主の初臨(世界で最初のクリスマス)当時の人々が最も必要としていた慰めと希望のメッセージであるだけでなく、いつの時代も、疲弊しきってもなお、救いの約束を待ち望む人々を慰め勇気づける御言葉です。「きよしこの夜」の原型はこのことを歌うのです。

今も世界が必要としているのは慰め、平和、そして希望のメッセージです。
原型の「きよしこの夜」こそ、このクリスマスに歌われ聞かれるべき慰め、平和、希望のメッセージです。
今、ウクライナ(12月24日夜のNHKで、現地のクリスマスが報道されてました)や東ヨーロッパ諸国の人々はロシアの暴虐と極寒に曝されています。
政治的・民族的弾圧を受けている教会も多くあります。
また、私たちのそばには、人に話せぬ重荷を負って一人悩み苦しむ方々も大勢おられます。
この様な人々にこそ、慰めと希望の歌声を、メッセージをお届けしたいです。
原型の「きよしこの夜」を聞いて頂き、そしてご自身で神を讃美していただきたいのです。

  「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和がみこころにかなう人々にあるように。」(2:14)


【祈り】
今日も私たちの主でいて下さる神様
全世界が必要としている贈り物を、貴方はクリスマスに送って下さったこと、心から感謝します。
どうぞ、私たちの霊的な目で貴方の御業をさやかに見させて下さい。
主イエスの名によって祈ります、アーメン。

【参考文献】
(大塚):『「きよしこの夜」物語』 ヴェルナー・トゥースヴァルトナー(著)、大塚仁子(訳)、アルファベータ、2005/12/1
(大野):大野野百合(著) 「きよしこの夜」ものがたり―クリスマスの名曲にやどる光、教文館、2015/9/16
(濱田):原典版「聖しこの夜」/グルーバー作品集(CD 30CT-77)添付解説書、濱田滋郎(はまだ じろう)、1987

※↑『原典版「聖しこの夜」/グルーバー作品集』(CD 30CT-77)添付解説書 裏表紙

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  1. 2022年12月24(25)日 配付資料1.pdf

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2022年 メッセージ一覧

クリスマスイブ 夕拝 「何が見えていますか」 ~♪ きよしこの夜 (シンシナティ日本語教会)

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岡本先生と共に味わう讃美の力(7)「われに来よと主は今 Jesus Is Tenderly Calling」(シンシナティ日本語教会) 

今回は多くの方の愛唱歌であります讃美歌517番「われに来よと主は今 Jesus Is Tenderly Calling」を取り上げて讃美歌を歌い、歌詞の源になっている聖書箇所からのメッセージとともに分かち合いの時間を持ちました。

岡本先生と共に味わう讃美の力(6)「善き力に囲まれて Von guten Mächten」(シンシナティ日本語教会)

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