月報 2019年3月号 「 寄り添う人、寄り添われる人 」

月報 2019年3月号 「 寄り添う人、寄り添われる人 」

イエスはその場所に来ると、上を見上げて彼に言われた。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。
わたしは今日、あなたの家に泊まることにしているから。」日本聖書協会『口語訳聖書』マタイによる福音書 19章5節

 教会学校の子どもたちにも良く知られたザアカイは、突然主イエスの訪問を受けた人々の一人です。ザアカイは主イエスと一緒にどんなひとときを過ごしたのかは聖書に書かれていませんが、彼の喜び様は並大抵でなかったことは生き生きと描写されています。

 牧師である私も家内と連れだって、ご高齢やご病気ゆえに自力での礼拝出席が叶わなくなった教会員の方々を訪問します。先日、O兄がお世話になっている施設を訪問した時のことです。信仰生活65年を経て、今では見守り介護が必要なO兄は、とても快適なリビングに置かれたマッサージチェアに座ってうとうとされてました。車椅子に移乗しテーブルを囲み、たどたどしい会話を始めたのですが時々居眠りされるんです。真横にいた私も、その居心地良さに、ついつられて居眠りしてしまいました。しばらくして私が目を覚ますと、私より先に目を覚ましたO兄がニコニコして私を見ておられるんです。

 後になって、ふと気づきました。訪問に出掛ける自分は、それ程意識はせずとも、私が相手の方に寄り添うんだ、自分の訪問が多少なりとも相手の方の慰めや励ましになれば、と“結果”を期待していた。しかし、今回は、O兄が私に寄り添って下さっていたんだ、寄り添っているつもりの人が、いつの間にか寄り添われる人になっていた...と感じたのです。

 聖書に描写されたイエス・キリストの“訪問”には、気負を全く感じません。あの取税人ザアカイに対しても「人間はこうあるべきだ、そうなれない者は救われない」と迫ることも無かったようです。ただ罪深い人間から片時も離れずに寄り添ってくださり、その結果、その人は変えられていきました。

 今回のO兄訪問は、主イエスが長年寄り添って下さっている方と一緒にいる時ならではの不思議で素晴らしい体験となり、大切な事を教えられました。


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2019年 メッセージ一覧

月報 2019年12月号 「 クリスマスという、神の時間厳守 」

クリスマスについて「きょう」と言われてます。聖書の「きょう...」という言葉は、昨日、今日、明日と言った日常的な時間の流れを超越した特別な日、すなわち神が予め定めておられた、予定されていた「その日」、…

月報 2019年11月号 「 永遠への思慕(しぼ)」

 聖書は私たち人間についてこう言います、「…あすのこともわからぬ身なのだ。あなたがたのいのちは、どんなものであるか。あなたがたは、しばしの間あらわれて、たちまち消え行く霧にすぎない」(ヤコブ4:14)と。そ…

月報 2019年10月号 「 詩篇を通して主イエスにまみえる」

 主イエスはこう言われました、「 わたしが以前あなたがたと一緒にいた時分に話して聞かせた言葉は、こうであった。すなわち、モーセの律法と預言書と詩篇とに、わたしについて書いてあることは、必ずことごとく成…

月報 2019年9月号 「 老いの坂は上るもの 」

 9月16日は敬老の日です。老年に入る年頃を「初老」と言い、四十歳からだそうです。平均寿命が延びた現代はもっと遅くても良いでしょう。この初老を境に、それまでグングン人生を上り詰めてきた人でも、その後は老…

月報 2019年8月号 「 破れ口」は塞(ふさ)がれた

  7月21日の説教で、標記の詩篇を引用しながら「いつの時代も『彼は他人を救った。もし彼が神のキリスト、選ばれた者であるなら、自分自身を救うがよい』(ルカ23:35)と嘲る。しかし主イエスは私たちを救う為に御自…

月報 2019年7月号 「 悲しいことを話していいですか? 」

 痛ましい事件が頻発する昨今です。しかし、たいていは私たちにとって“遠いところの出来事”なので、当事者の方々に思いを馳せることがほとんどありません。 ところで、先月六月中旬、以前から親しくしている素敵…

月報 2019年6月号 「 相談相手 」

 誰の言葉を聞くか、誰を相談相手とするか。これは人生を左右します。そこで今、自分に問うてみましょう、「一体、わたしは誰の言葉を聞き、誰の言葉に従っているのだろうか」と。  聖書に記された歴史は、相談…

月報 2019年5月号 「生れ変って歩き出すよ ♪」  ~中島みゆき「時代 」

 中島みゆきさんの歌詞には、聖書の言葉を連想させるものが少なくありません。「時代」もそうです。この作品が1975年に発表されてから凡そ45年が経ちました。いわば古い曲ですが、昭和と平成の時代を生きた人々ば…

月報 2019年4月号 「 生きることを諦めないで! 」

 元気なうちは、生きていることは当たり前のことで気にもとめません。しかし、死が近づいてくるのを感じると、元気で生きていることの有り難みを痛感するようになります。 私事で恐縮ですが、94歳になったばかり…

月報 2019年3月号 「 寄り添う人、寄り添われる人 」

 教会学校の子どもたちにも良く知られたザアカイは、突然主イエスの訪問を受けた人々の一人です。ザアカイは主イエスと一緒にどんなひとときを過ごしたのかは聖書に書かれていませんが、彼の喜び様は並大抵でなか…

月報 2019年2月号 「 すべての人に臨むところは、みな同様なのか ?! 」

伝道の書は、虚無的な言葉を多用ながら人生の目的・生きる意味を問いつつ、間接的に神の存在とその神に対する信仰の必要を説いています。この聖書箇所は、“一寸先すらも分らぬ人間だが一つ確かなことがある。それは…