岡本先生と共に味わう讃美の力(3)「こころみの世にあれど Be Thou My Vision」(シンシナティ日本語教会)

岡本先生と共に味わう讃美の力(3)「こころみの世にあれど Be Thou My Vision」(シンシナティ日本語教会)

これらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を得るためです。世にあっては苦難があります。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝ちました。」日本聖書協会『口語訳聖書』ヨハネによる福音書 16章33節

Ⅰ.メッセージをお聞きいただくうえで
今日は、讃美歌(「こころみの世にあれど Be Thou My Vision」)の歌詞を辿りながら、そこにちりばめられた宝石のような聖書の言葉の魅力と力をご一緒に味わって参りましょう。聖書は新改訳2017を用います。

引用聖句は15もありますがリラックスしてください。個々の聖句の説明は致しませんので、「春、桜並木道を辿りながら桜を愛でる」かの如く聖句を味わって頂ければと思います。
ただ、桜の花は儚く(はかなく)季節は移ろいゆきます。しかし、神の言葉と「イエス・キリストは、昨日も今日も、とこしえに変わることがありません。」(ヘブル13:8)


Ⅱ.キーワード
(1)Vision
・私たちが抱いている「将来の展望」「志・目標」、そして文字通り「見通す力」「視力」など色々なニュアンスを一言で表せるとても意味深い言葉です。
・聖書では「まぼろし(幻)」と訳されます。霊的渇望や危機的状況にある信仰者に、夢や幻想的なイメージを媒介として神がみこころを啓示するのに用いられる手段の一つです。
・歌詞の最初と最後の行に「my Vision」という言葉が配置され“額縁”が構成されています。そしてその内側に、今日ご紹介する聖句により啓示されたvisionの数々がちりばめられています。
(2)Thou my
あなた(神)と私(作詞者、詩人)の親密な関係が表現されています。


Ⅲ.歌詞の略解
『Be Thou My Vision』は、6世紀頃に古いアイルランド語で書かれ、歌詞に音楽がつけられるまでアイルランドの修道院で伝道に用いられたとのことです。
20世紀に入り、古いアイルランド語から英語に翻訳され、その後韻律が整えられた(versify)歌詞が今日歌い継がれています。

ところで、この歌詞が修道院による伝道に用いられてきたということは、修道士たちはこの詩文を携えて町々村々に出掛けていったわけです。おそらく、「私にはVision があります。この上ない喜び宝を持っています。この事を是非お話しさせて下さい」と、この詩文から始めて聖書が解き明かされていったことでしょう。


Ⅳ.行#1-4 至上の価値、それは救い
■ 行# 1~2 --
汝は我が道しるべ 我が心の主
他はすべて無価値 汝こそが救いなり
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肉眼では見えずとも心の目で見えている my Visionの拠って来たるところを証す聖句をご紹介します。

【聖句1】 ===
エペソ2:7 それ(※注記 私たちの救い)は、キリスト・イエスにあってわたしたちに賜わった慈愛による神の恵みの絶大な富を、きたるべき世々に示すためであった。
2:8 あなたがたの救われたのは、実に、恵みにより、信仰によるのである。それは、あなたがた自身から出たものではなく、神の賜物である。
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私が救われたからです!と詩人は歌い、続けて救いの素晴らしさを歌います。

■ 行# 3~4 --
汝は最高の思考 昼間でも夜中でも
覚めても寝ていても 汝の存在は我が光
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この歌詞は次の御言葉を思い起こさせます。

【聖句2】 ===
箴言6:22 あなたが歩くときには、それがあなたを導き、寝ているときには、あなたを見守り、目覚めるときには、あなたに話しかける。 (※注 それ:御言葉)
6:23 命令はともしび、おしえは光、訓戒のための叱責は、いのちの道であるからだ。
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Ⅴ.行#5-8 救いは、神と人との関係を修復する
■ 行# 5~8 ---
汝は我が知恵 汝は我が真実の言葉
我は汝と共に 汝は我と共に 主よ
汝は偉大なる父 我は誠実なる息子
汝は我の中にあり 我は汝と一つなり
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この歌詞は、神秘主義的で異教的な神人合一の趣が無きにしも非ずですが、決してそうではありません。
むしろキリスト教信仰の核心、福音の神髄を歌っています。それは、救いがもたらす神と人との関係性です。

この社会の人間関係では、苦手意識や後ろめたさを抱く相手とは親しく交われず避けます。神との関係も同様です。アダムとエバの堕罪以来ずうっと受け継いできた性質「罪」を持つ罪人は罪の奴隷になっており、神と親しく交われません。避けます。
ところが神は、その様な人間に対して、一方的に罪の赦し、和解を申し入れて来られました。それがクリスマスの出来事であり十字架です。
この和解を受け入れる時、罪の赦しが宣言されます。その時、わだかまりは雲散霧消し、大胆に「父ちゃん!」と駆け寄ってハグ出来るほどの父と子の関係に入れられます。
この作詞者は、このような神と人との関係に入れられた喜びを高らかに歌っているのです。

主イエスは言われました。

【聖句3】 ===
ヨハネ5:24 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしのことばを聞いて、わたしを遣わされた方を信じる者は、永遠のいのちを持ち、さばきにあうことがなく、死からいのちに移っています。
5:25 まことに、まことに、あなたがたに言います。死人が神の子の声を聞く時が来ます。今がその時です。それを聞く者は生きます。
5:26 それは、父がご自分のうちにいのちを持っておられるように、子にも、自分のうちにいのちを持つようにしてくださったからです。
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救いがもたらす神と人との関係を記す聖書をいくつかご紹介しましょう。

【聖句4】 ===
ガラテヤ2:19 しかし私は、神に生きるために、律法によって律法に死にました。私はキリストとともに十字架につけられました。
2:20 もはや私が生きているのではなく、キリストが私のうちに生きておられるのです。今私が肉において生きているいのちは、私を愛し、私のためにご自分を与えてくださった、神の御子に対する信仰によるのです。
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【聖句5】 ===
ローマ8:14 神の御霊に導かれる人はみな、神の子どもです。
8:15 あなたがたは、人を再び恐怖に陥れる、奴隷の霊を受けたのではなく、子とする御霊を受けたのです。この御霊によって、私たちは「アバ、父」と叫びます。
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【聖句6】 ===
ヘブル10:17 「わたしは、もはや彼らの罪と不法を思い起こさない」 と言われるからです。
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Ⅵ.行#9-12 この世の戦いでの勝利
■ 行# 9 ---
汝は我が盾 戦さの剣
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この歌詞は、あの聖句を歌っている! と直ぐに判りますね。

【聖句7】 ===
エペソ6:13 ですから、邪悪な日に際して対抗できるように、また、一切を成し遂げて堅く立つことができるように、神のすべての武具を取りなさい。
6:14 そして、堅く立ちなさい。腰には真理の帯を締め、胸には正義の胸当てを着け、
6:15 足には平和の福音の備えをはきなさい。
6:16 これらすべての上に、信仰の盾を取りなさい。それによって、悪い者が放つ火矢をすべて消すことができます。
6:17 救いのかぶとをかぶり、御霊の剣、すなわち神のことばを取りなさい。
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■ 行# 10~12 --
汝は我が威厳 汝は我が歓喜
汝は我が魂の避け所 汝は我が高き櫓
汝は我を天へと引き上げ 汝は我が力の力
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【聖句8】 ===
詩篇61:3 あなたは私の避け所敵に対して強いやぐら。
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【聖句9】 ===
詩篇27:4 一つのことを私は【主】に願った。それを私は求めている。私のいのちの日の限り【主】の家に住むことを。【主】の麗しさに目を注ぎその宮で思いを巡らすために。
27:5 それは主が苦しみの日に私を隠れ場に隠しその幕屋のひそかな所に私をかくまい岩の上に私を上げてくださるからだ。
27:6 今私の頭は私を取り囲む敵の上に高く上げられる。私は主の幕屋で喜びのいけにえをささげ【主】に歌いほめ歌を歌おう。
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こうした御言葉がもたらすVisionが行#10-12で歌われています。


Ⅶ.行#13-16 世の惑わしへの勝利
このVisionをもたらす聖句をいくつかご紹介しましょう。

【聖句10】 ===
Ⅱコリント4:18 私たちは見えるものにではなく、見えないものに目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものは永遠に続くからです。
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主イエスは具体的に解りやすく教えて下さいました。

【聖句11】 ===
マタイ6:19 自分のために、地上に宝を蓄えるのはやめなさい。そこでは虫やさびで傷物になり、盗人が壁に穴を開けて盗みます。
6:20 自分のために、天に宝を蓄えなさい。そこでは虫やさびで傷物になることはなく、盗人が壁に穴を開けて盗むこともありません。
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【聖句12】 ===
Ⅰペテロ1:3 私たちの主イエス・キリストの父である神がほめたたえられますように。神は、ご自分の大きなあわれみのゆえに、イエス・キリストが死者の中からよみがえられたことによって、私たちを新しく生まれさせ、生ける望みを持たせてくださいました。
1:4 また、朽ちることも、汚れることも、消えて行くこともない資産を受け継ぐようにしてくださいました。これらは、あなたがたのために天に蓄えられています。
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これらの御言葉によるVisionをちりばめて行#13-16が歌われます。

■ 行# 13~16 --
富には目もくれない 人々の空しい称賛にも
汝は我が 相続財産 今もいつでも
汝こそ 汝のみが 我が心のかなめ
天の最上の王 汝は我が至宝
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ここで、行#9-12、13-16を要約した聖書の言葉をご紹介しましょう。

【聖句13】 ===
詩篇73:23 しかし私は絶えずあなたとともにいました。あなたは私の右の手をしっかりとつかんでくださいました。
73:24 あなたは私を諭して導き後には栄光のうちに受け入れてくださいます。
73:25 あなたのほかに天では私にだれがいるでしょう。地では私はだれをも望みません。
73:26 この身も心も尽き果てるでしょう。しかし神は私の心の岩とこしえに私が受ける割り当ての地。
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もっと短く一言でいうなら、「あなたさえ私と一緒にいてくだされば」と言うことです。
裏返して言えば、この世の戦いや誘惑に負けそうな時とは、
・御言葉を通して心の目で見ていたVisionが見えなくなった
・Thou my、「父と子」という神と人との関係が損なわれた
そういう時ではないでしょうか。


Ⅷ.行#17-20 御国を仰ぎ望む
行#17-20では、世の戦いや惑わしと戦いつつ、御国で栄冠を受けることを仰ぎ望む究極のVision が歌われますが、その礎とも言うべき御言葉をご紹介しましょう。

【聖句14】 ===
Ⅱテモテ4:7 私は勇敢に戦い抜き、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通しました。
4:8 あとは、義の栄冠が私のために用意されているだけです。その日には、正しいさばき主である主が、それを私に授けてくださいます。私だけでなく、主の現れを慕い求めている人には、だれにでも授けてくださるのです。
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このことの確かさをよみがえりの主イエスは確信させて下さりました。

【聖句15】 ===
ヨハネ16:33 これらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を得るためです。世にあっては苦難があります。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝ちました。」
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それで、詩人は高らかに神を、御子とイエス・キリストを誉め讃えて歌います。

■ 行# 17~20 --
天の最上の王 我が勝利は得られた
天の喜びに近づかん おお 輝く天の太陽
我が心の深く 何が起きようとも
汝は我が道しるべ 万物の統治者
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作詞者は「汝は我が道しるべ 万物の統治者」 「Still be my Vision, O Ruler of all.」と締めくくります。
Rulerとは、全てを律するお方、統治者、主権者、…の源である方、定規規等々の意味で、コンピュータ用語にもなっています。


Ⅸ.結び
私のメッセージは、これで終わりですが、この後引き続いて皆さまお一人お一人で思い巡らしていただきたいことがあります。それは、
「歌詞の最終行、汝は我が道しるべ 万物の統治者、Still be my Vision, O Ruler of all.の意味するところを、自分の言葉で友だちにどう説明しようか!?」
と言うことです。

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