「くしき星よ闇の夜に」( 讃美歌118番 )
2:9 彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。
2:10 彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。
2:11 そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
日本聖書協会『口語訳聖書』マタイによる福音書 2章1~11節
今年もクリスマスが近づいてきました。世界中で、平和で喜びあふれるクリスマスが祝われることを心から願ってやみません。私たちの教会では12月23日までの毎日曜日、クリスマスの讃美歌から一曲を取り上げ、その歌詞の元になった聖書箇所(※1)からメッセージをお届けします。
今日、取り上げる讃美歌は、讃美歌118番 「くしきほしよやみのよに」です。歌詞はリンク先をご覧下さい。
https://www.rcj.gr.jp/izumi/sanbi/sa118.html
※1 『「讃美歌」および「讃美歌第二編」のための聖句引照索引』 、日本基督教団賛美歌委員会日本基督教団出版局、1974年
讃美歌118番は「くしき星よ やみの夜に」と歌いだします。
「くしき星」とは、今日の聖書箇所で《キリストのお生まれを東方の博士たちに知らせ、キリストのもとへと導いた「ベツレヘムの星」のことです。また、クリスマスツリー頂点の大きな星飾り、トップスターとして現代も輝いています。
1.聖書に記された出来事
マタイ2:1-2 イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、/「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。
今日の聖書箇所には二つの救い主誕生預言の成就が記され、そのことが讃美歌118番で歌われています。
ところで、聖書の預言は予言と別物です。預言は「神の御業を予め知らせる約束の言葉」です。ですから、預言は何百年何千年経ようとも色あせません。しかも、最初はおぼろげな内容が時代を下るにつれ徐々に具体的になり、時至って実現します。預言にはこういう不思議さがあります。
(1)さて、成就した二つの救い主誕生預言の第一ですが、博士たちが見た「星の出現」です。一般には古代中近東における占星術の産物と考えられています。しかし、ある預言が記憶されていた結果とも考えられます。その預言とは、
民数記24:17 わたしは彼を見る、しかし今ではない。わたしは彼を望み見る、しかし近くではない。ヤコブから一つの星が出、/イスラエルから一本のつえが起り、…
この預言は、紀元前1400から1500年頃、モーセに率いられてエジプトを脱出し荒野を旅するイスラエルの民に与えられた祝福の約束です。「星が出、イスラエルから一本のつえが起る」、すなわち神の民を治める王が出る、と神が約束されたのです。この預言を知っていた博士たちが、天体に現れた不思議な“しるし”を見て、イスラエルの民の都にやって来たとも考えられます。これが、今日の聖書箇所から見て取れる第一の預言成就です。
(2)ところで博士たちは、もうひとつの救い主誕生預言は知らなかったようです。なぜなら博士たちは具体的な場所を問うたからです。
2:5 彼らは王に言った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこうしるしています、
「彼ら」、すなわち祭司長たちと民の律法学者たちが答えに引用したのは、博士たちの到来より700年程も前の旧約預言です。
ミカ書5:2 しかしベツレヘム・エフラタよ、あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが、イスラエルを治める者があなたのうちから/わたしのために出る。その出るのは昔から、いにしえの日からである。
この救い主誕生預言をも信じて進み行く博士たちの思いが讃美歌118番1節で歌われます。
〈1節〉
くしき星よ やみの夜に
いよよひかり かがやき
すくいぬしの 在す村に
とくみちびき ゆけかし
2.博士たちの喜び
博士たちが進んで行くと、
マタイ2:9-11a …見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。/彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。/そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み…
博士たちの喜びが讃美歌118番2節で歌われます。
〈2節〉
窓もる風 いとさむき
かいばおけに 臥したもう
みどりごこそ かしこくも
きみのきみに ましませ
現代風に言い換えると、「飼い葉桶に 寝かされている幼子こそ おそれおおくも あらゆる王の中の王であって 万人の上に立って天下に号令するお方です」と歌っています。
3.私たちはどうすれば…
救い主を拝した博士たちは、
2:11b …また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
と聖書に記されています。これを受けて讃美歌118番3節では、「さて、私たちはどうすべきだろうか。博士たちの捧げ物に優るとも劣らぬ宝を世界中から探してきて御前に捧げるべきだろうか?」との自問が歌われます。
〈3節〉
さらばわれら海山の
真玉、黄金、しろがね
においものをとりあつめ
ささぐべきか、みまえに
すると4節で、その問への答えが歌われます。
〈4節〉
たぐいあらぬ たからさえ
たてまつるに 足らねど
まずしき身の ほめうたを
主はよろこび うけまさん
この歌詞の「まずしき身」の意味ですが、
マタイ5:3 「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
とあるように、自分の霊的貧しさを、自分が神の前には霊的に乞食同然であることを自覚して謙る人のことです。また、主なる神が喜んで受けて下さる「ほめうた」ですが、讃美歌そのものや、ただ讃美歌を歌うことではありません。
ローマ15:9 異邦人もあわれみを受けて神をあがめるようになるためである、/「それゆえ、わたしは、異邦人の中で/あなたにさんびをささげ、/また、御名をほめ歌う」/と書いてあるとおりである。
とあるように、「神の御業・御言葉に全面的に賛同し承諾した結果として、信仰から湧き上がってくる讃美」のことです。そこで4節を意訳すれば、
比類無き宝物でさえ、
あなたにお捧げするには不十分です。
それなのに 霊的には乞食同然の私の讃美を
あなたは喜んで受けて下さる!
こう歌っているのですね。
4.私たちへのクリスマスメッセージ
いまやクリスマスは、年末の風物詩、商売のチャンス、歓楽の時の様ですが、イエス・キリストが生きておられるからこそ私たちはクリスマスを祝います。そして今も生きておられるイエス・キリスト御自身が言われました。
黙示録22:16 わたしイエスは…ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」。
イエス・キリストが〈輝く明けの明星〉であることは、やがて長かった暗闇の時代が終って夜明けが来ること、天の御国が完成することの保証です。
神は、「その星」によって博士たちを大きな喜びへと導かれた如く、神はイエス・キリストによって私たちをも御国での喜びへと導いて下さいます。私たちは、御国の素晴らしさを未だ見てはいませんが、明けの明星が夜明けを予示するように、御国が完成する終わりの日は必ず来ます。
讃美歌118番「くしき星よ闇の夜に」は、この信仰を証し、神を誉め称える讃美歌です。
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